ましまろ
「今なら、全部口の中に入るでしょ」
彼にそう言われて、あたしは彼の股間に屈みこむ。
さっきまであたしの中に入ってたもの。
さっきまでは猛々しくて硬くて太くて、怖いくらいだった彼のもの。
あたしの中に彼の命が注ぎ込まれて、くたり、って残った抜け殻。
…今度は口に咥えこむ。
彼はあたしの頭をぐぐう、と押さえつける。
あたしの口は彼の身体にひっついてる。
確かに…今なら全部、入る。
さっきまでの状態ならこんなことない。
ああ、その差はあたしの中に入ってるんだ。
それがとても嬉しくて、舌を彼に絡みつかせる。
マシュマロみたいに、やわらかいようで適度な弾力があって、
舐めてるこっちの方が気持ちいい。
彼を舐めると、あたしの味がした。
頭を押さえつけられているから、彼の表情なんて見えない。
彼からあたしは見えるのかな?
感触を存分に得たいから、目を閉じて、口の中に神経を集中させる。
彼の声が聞きたいから、耳にも神経を集中させているけど。
頭を押さえつけている、と思っていた手が、少しずつ撫でてくれるようになった。
それが嬉しくて、口の中の彼を舌で撫でる。
ちゅぷ、ちゅ・・・・・
だんだんと硬くなってきて、のどの奥の奥に彼があたる。
少し吐き気がする。
本当に奥を突かれていると、嬉しい反面飲み込んでしまいたくなる。
そして本当の本当の、奥の奥まであなたを包み込みたいと思う。
けれども、私にはまだそんなことできなくて、あなたが奥に来たことで涙目にすらなってしまう。
実際は苦しいし吐き気もするし、けれど、本当に嬉しくなる。
くちゅ、ちゅ、ちゅば・・・・・・
口の中の彼は本当にだんだんと大きくなり、硬くなり、口の中には納まりきらない。
あたしの唾…というよりはよだれもたくさん出て、あたしのひざに落ちてくる。
くちびるでなぞり、舌ですくい、指で触れる。
袋もなんだか持ち上がっている気がする。
今は味はまったくしなくて、けれどもすごく美味しいものを食べている気分。
ああ、きっと今のあたしの顔は、とろん、ってしてるんだろうなあ。
ふと彼の顔を見上げる。
それまで彼もとろん、ってしてたみたいだけど、目が合うとにっこりしてくれた。
あたしもにっこりし返して、ちょっと大振りに彼を咥えこんだ。
彼のため息が聞こえる。
嬉しい。
嬉しい。
少し速度も上げて、場所も絞り込んで、力を入れたり抜いたりして、
ちゅばっ、ぐちゅ、ちゅば、
彼があたしの頭をつかんで上下させる。
ああ、あたしは今彼のモノになってるんだ…
その間も舌を少し動かしたりしてるけど、そんなの感じてもらえてる?
あたしは彼の思うがままで、そのことがやっぱり嬉しい。
思うがまま、お気に召すまま…うん、嬉しい。
あたしって下手なのかな?とかも思うけど…
あたしの口、手、体全部好きに使ってもらえるのは嬉しい…
「いくよ」
声がしたと思ったら、またぐぐぐ、って奥まで彼が入ってくる。
彼がびくん、びくん、ってなってる。
味が感じられないくらい奥に注ぎ込まれるのに、やっぱり口の中は彼の味ばっかりする。
どうしても、欲しい、って思ってしまって少し吸い出す。
口の中がいっぱいになって、一度彼から離れる。
飲み込んでも彼の味がいっぱいに広がってる。
すぐに彼にまた口付ける。
彼の息遣いが聞こえる…
どうしても、あたしは彼が好きみたい。
「俺が好きなの? それとも俺の?」
聞こえない振りをした。
2004.8.23
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